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BSE問題と確率

2005年7月17日

宇佐美 保

 米国は、2頭目のBSE牛が見つかった後も、従来の検査方法を改めることもなく日本に米国の牛の輸入を強要しています。

多分、米国の農務長官だったと記憶していますが、テレビ画面から彼の恐ろしい発言が排出されていました。

“BSEの牛を食べたところで、発病する確率は、交通事故に遭遇する確率より低いのだ!”と。

 

 残念なことに、朝日ニュースターの番組『パックインジャーナル』でも、AERAスタッフライターの田岡俊二氏が、常々同様の発言をされていました。

 

 「交通事故の確率」と十把一絡げに表現するのは不当です。

自動車を注意深く運転する方と、乱暴運転の方とでは交通事故を起こす確率は異なります、自転車に於いても然り、歩行者に於いても然りです。

そして、都市部より田舎の方が発生確率は断然低くなるでしょう。

山間部、離島ではなおさらでしょう。

 

 ですから、離島に住んで車を運転しなければ交通事故の確率は無視できます。

何も離島でなくても、イタリアのベネチアでは自動車は走れませんから自動車による交通事故の確率は無視できます。

 

 それでも、空から飛行機が降ってくる確率はゼロではないかもしれません。

(このような事態は交通事故といえますか?)

 

 ある一個人が遭遇する事象の確率として、このように交通事故の確率を十把一絡げに算定することは乱暴なことです。

交通事故に遭遇する確率は、人それぞれ異なるのです。

 

 そして、BSE感染牛を食べて変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が発症する確率も当然ながら個人差があります。

なにしろ、

 日本で初めて発病し死亡された方は1カ月間ほど英国に滞在しただけというのに、厚労省は「現時点では英国で感染した可能性が有力」とみているのですから!


 この厚労省の見解を肯定するなら、

BSE牛を食べて発祥する確率は、交通事故の確率以上に高い

とも言えるでしょう。

 

 そして、何よりも交通事故の確率と大いに異なるのは、“BSE牛を食べなければ、BSE牛が原因で発病する確率はゼロなのです!

 

 ですから、

 米国からBSE牛が輸入されなければ、その牛によって私は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症する確立はゼロなのです。

 なにしろ、一度輸入されてしまえば、その米国牛を食べまいと思っても、どのような経路か分かりませんが、私達の食べる牛に混入してくる可能性が発生してきます。

 

 私達はBSE牛を食べる危険を選択しなくても良いのです。

私は、現在の日本と同様の対策が採られていない米国の牛を輸入して貰うのを拒否するのです。

 

 一番はっきりしている確立は

宝くじを買わなければ宝くじに当たる確立はゼロ

なのです!

 

 

 

 

(補足)

毎日新聞(7月15日)の記事を抜粋して次に掲げます。

 

BSE:日本で発見の20頭中9頭、米国なら検査対象外

 牛海綿状脳症(BSE)について、米国の検査制度を日本で適用した場合、過去に20頭見つかったBSE牛のうち、少なくとも9頭は見落とされていたとの分析結果を14日、農林水産省が食品安全委員会のプリオン専門調査会に提出した。

……

 米国は「BSEの牛はすべて、症状が出た牛や死亡牛などから見つかる」と仮定し、BSE検査の対象をこうした牛に絞っている。日本の20頭のうち9頭は見かけ上はまったく健康で、米国なら検査対象外だった。……


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